花は世につれ世は花につれ

知地正和 花と共に

池坊の花

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水戸芸の池坊の部屋の【立花】です。

りっか』と発音します。日葡辞書の中では『たちばな』と発音して紹介していたようです。もしかしたら立花以前の【たて花】と読んでいたころのものかも知れませんが、まあそんな事はどうでもいいですね😅

この花を見ると池坊專應口伝に出てくる文言を思い浮かびます。

 

『野山水辺自ずからなる姿を居上にあらはし、先祖さしはじめより一道世にひろまりて都鄙のもてあそびとなれるなり』

 

※野山水辺にある自然の姿を居の中に表現して、先祖(聖徳太子又は小野妹子)が花をいけはじめてからあっという間に日本中に広まった

 

『廬山湘湖の風景もいたらざればのぞみがたく、瓊樹瑤池の絶境も耳にふれて見ること稀也。王摩詰が輞川の圖も夏涼しきを生ずる事あたはず。舜叔挙が草木の軸も秋香を発することなし、又庭前に山を築き垣の内に泉を引くも人力をわづらはさずして成事を得ず、只小水尺樹を以って江山数程の勝概をあらはし暫時頃尅の間 千変万化の佳興をもよほす、宛仙家の妙術とも言いつべし』

 

※憧れの中国の廬山湘湖の風景もそこに行かなくては見ることが出来ない。瓊樹瑤池の絶景も噂は耳にするけれど見ることはできない。王摩詰の描いた『輞川の圖』もそれを見ても夏の暑さは変わらない、舜叔挙の描いた草木の掛軸も秋の香を発する事はない。また庭に人工の山を造って泉を引いて自然の風景を真似ても人手ばかりかかってしまいなかなかうまくいかない、それにひきかえて、いけばなは少しの水と短い樹々で中国の江山に勝るとも劣らない大自然を表現してほんの僅かな時間で四季の変化を見ることが出来る。それはまさに神業と言っても良い!

 

って事が書かれています。もっと面白い事が書かれてますが興味のある方は是非專應口傳をお読みください。

池坊專應口伝は他の花伝書にはない精神理論が書かれている珍しい花伝書です。この後には『立華時勢粧』(りっかいまようのすがた)などその後の花伝書にはいけばなたる所以が盛り込まれてきます。そう言った意味でもこの池坊專應口伝は凄い花伝書なんです。