花は世につれ世は花につれ

知地正和 花と共に

華道全集


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こちらは昭和14年に出された【華道全集】という書です。その中に興味深い一文があったので紹介します。

[盛花の水盤花形]

盛花には、色彩花と景色花と二種の挿法がある。色彩花は水盤の花器に限ったもので無く、いろいろの形のものが扱われている。しかし景色花の花器は殆ど大部分が平型水盤を用ひている。これは、盤上に景色を表現するに、都合の良い関係からであろう。そして水辺を意味づけたり、水面を意味づける場合は、水盤の面を広く見せて置くし、陸を意味づける場合は、巧みに日蔭蔓のような草物で水を隠してしまうという手法をとっている・・・・

 

この書は諸流をまとめたもので当時いけばなを一つにまとめようとしていた事が伺えます。しかしやはりいけばなは流儀あってのもの、それを伝承してきた自負が流にはありますので一纏めにすることは不可能だと思います。いけばなは元々自由だった挿し花に『形』『技』『理論』『精神』などの規制を加えたものが【いけばな】でありさらにそれが長い時間伝承されたものが【華道】と言われるものです。中国には日本よりも古い時代からいけばなのようなものがいけられておりました。しかしそれはその時だけのもので中国人はその花の技術、理念などには興味がなかったのでしょう。それが代々伝承される事はありませんでした。ですからそれを【いけばな】とは呼びません。私たちは【中国挿花】という呼び方で残された花の形だけでそう呼んでおります。日本人が生けたのが【いけばな】というかなり捻じ曲がった考えの人がとても多い中、今こそいけばなの定義をザックリとでも認識する時だと思われます。